35歳超えて会社員やってて大丈夫?
以前、「サントリー新浪社長の「45歳定年」発言に思うこと」という記事を配信しさまざまな反響をいただいたが、私は昔から「会社員35歳定年説」を提唱していたので氏の発言にはなんら驚きがないばかりか、むしろ「え、世の中のみんなは45歳まで会社員やる気なの?」と、いまだ会社員を取り巻く古い通念の存在に驚きを禁じ得ない。
先日、このようなものが私の目に飛び込んできた。
東京都労働局の主催で、民間企業とタイアップした「正社員就職支援 GO UP プログラム」というものらしい。
公式サイトの解説によれば、資格取得支援の専門学校法人や転職支援企業などがスクラムを組み、35歳から54歳までのいわゆる「氷河期世代」の「正社員」での就職をサポートする試みとのこと。
要するに、私の唱えてきた「会社員35歳定年説」やサントリー新浪さんの「会社員45歳定年」発言を真っ向から否定するばかりか、それとは真裏のことをやろうとするきわめて逆説的な 人体実験 政策である。
フリー歴10年、会社に雇われるということを是とせず己の腕のみでサバイブしてきた私からすればこのような仕組みがあろうとなかろうと、そもそも正社員指向も憧憬も一切ない。
むしろフリーとして多種多様なクライアントとの契約でいろいろな現場を見てきた感覚で言うと「正社員ってだるくね?」という考えしか会社員に対して抱かない。
(※なぜそう思うかは過去記事【っていうかなんで正社員なの?】をお読みいただきたい)
組織の中の意思決定、合意形成など企業体質や社風に対して順応する能力や特定の狭い組織の中でサバイブする力量に長けた人なら会社員ライフに向くと思うが、私はそういう文化で消耗させられることが何より嫌だったので独立をした経緯があり、そんな人間からすれば、おそらくこの手の支援プログラムにエントリーする人は現時点では会社員でないはずなので、そうなると「その年でいまさら会社員になって、そのあとはどうするの?」とひとごとながらその理解し難い緩慢なビジョンに狼狽するのである。
支援プログラムがこれまで何らかの事情で社会的に自立が困難だった人、能力はあるけど時代が折悪しく正社員に就けなかった人が応募するプログラムということなのだろうとは理解するが、それはそれとして、第一にこの支援プログラムからは「就職氷河期世代を救うにはとりあえず会社員(正社員)にしとけばいい」という場当たり的な行政、お役所的、帳簿的発想が見え隠れするという根本的かつ深刻な問題が潜んでおり、本邦における”お上”のやり口が軽薄さはどうにかならないものだろうかと、氷河期世代の私は半ば嘆きをもってこれを断罪するしかない。
この政策がうまくいくのか、いかないのか。これで会社員になった人たちが定年を迎える4年後から25年後くらいにその結論が出るであろう。
しかしながら、私はこれの効果に対してまことに懐疑的であり、私ならとうていやりたくない、応募したくない支援プログラムだ。
もちろん、労働を取り巻く環境や人生のビジョンはケースバイケースであろうし、これが必要な人もいるだろうから、関心のある人は自己責任でこの支援プログラムを受けてみると良い。
当記事が僅かでも誰かのお役に立てれば幸いである。
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