【学術研究】日本の音楽業界を待つ未来

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先日配信した「【学術研究】なぜ演歌は廃れてしまったのか」に想定外の反響を頂いたが、外郭の部分で触れておかねばならない論点があるように感じたため、今回は先述の記事の補完ものを書こうと思い立ち筆を取るに至った。
前回の記事では「演歌」というジャンルに絞ってその廃れた原因をマーケ目線で分析したが、他のジャンルではどうなのかという当然ながら湧く疑問を晴らす、前回の続編とした立ち位置の記事としてご笑納頂きたい。

✓ もくじ

  1. 衰退している音楽は「演歌」だけではない
  2. ロックやポップスも同様の岐路に立つ
  3. 音楽は不滅だが内部の淘汰は進む

衰退している音楽は「演歌」だけではない

前回の記事で「演歌だけが衰退している」という誤解を招いたならばお詫びしたい。

当該の記事で私が訴えたかったことは、そもそも論としての「人々の娯楽の細分化と多様化」を前提とした「音楽業界の斜陽」があり、演歌が廃れたことはその一因ではあるものの、演歌は演歌ならではの理由があるという分析が記事の主眼だった。

「ネットで無料で聴けるもの」「スマホから無料でダウンロードするもの」という”音楽は金を出して買うものではない”概念が若い世代の根底に根付いてしまい、音楽(楽曲)が消費行動に帰結しないマーケットに変容してしまっているため、ロックでもフォークソングでもポップスでも演歌でもダンスミュージックでもヒップホップでもジャズでもアイドルソングでもレゲエでも何でも、とにかく音楽業界全体のマーケットが先細りしている中、演歌以外のジャンルはジャンル全体あるいはアーティスト個々のマーケットは小さいながらも常に新しいアーティストとそれに連なるファンを生み続けてジャンル内の新陳代謝をしているが、演歌だけはその体質が見られず、薄暮の音楽ジャンルとして社会の立ち位置を得てしまっているという事実が横臥している。

すなわち、「衰退しているのは音楽業界における共通の現象だが、演歌についてはより顕著にその傾向が見られる」という表現が最適と言える。

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ロックやポップスも同様の岐路に立つ

演歌の現状と課題、展望については【学術研究】なぜ演歌は廃れてしまったのか」で触れたとおりなので割愛するが、その他の音楽ジャンルも演歌同様の岐路に立つ現状があることは間違いない。

とはいえ、演歌のような「昭和の世界観」を聴かせる「音で魅せる民話」のような文化は、その世界観をリアルタイムで享受した世代が若年層だった頃から高齢層になるまで一代限りでその人生にぴったりと寄り添って果てていく「当代売り切り型のビジネスモデル」としての要素を強く帯びるために廃れた経緯があるが、ロックやポップスなどは時代に合ったチューニングやトランスフォームができるビジネスモデルなので、演歌に比べれば割としぶとく生き延び、我々の子孫の世代まで存置しているだろう。

音楽業界を取り巻く環境はネットと融合するなどして刻々と変化し、将来はどうなるかは誰にもわからないし、音楽を聴くデバイスや手法が消費のサイクルなどがどうなっていくのかもわからないが、少なくともすでに萌芽が見えるサブスクリプションモデルで楽しめる中のいちコンテンツとしての文化が音楽というものになるであろうことはマーケターでなくとも推測に容易い。

音楽は不滅だが内部の淘汰は進む

音楽業界にはどのような未来が待ち受けているのか。

人間の性質上、音楽を買わないながらも音楽を聴かなくなることはないだろう。人々はきっと、何らかのジャンルの音楽を聞き続けるに違いない。
そう考えると、音楽の命運としてはおそらくはこのようなところにたどり着くだろうと思う。
コンテンツ側、楽曲のジャンルとしての未来予測をするならば、ロック、ポップスなどはどの時代においてもニューミュージックとして存在し、娯楽のいちカテゴリとして人々の心にあり続け、一方の演歌は、軍歌や民謡、クラシック、地唄、浪曲のように伝統芸能(楽曲、歌謡)の一部として収斂していくように筆者は予測する。
つまりは、産業としての音楽は死なないながらも業界の中での淘汰が進み、セールスがある程度計算できるジャンルのものと、当事者もファンの性質もニッチでセールスとして計算するのは難しいが後世に残していくべきものに二分されそうだ、コモディティ化の進んだ娯楽あるいは商売の代表格になる、という結論に至る

音楽にかかわる業界として、あるいはコンテンツを制作する側としての未来は、セールスの期待できない、食えないけど自己顕示欲を果たすことのできる「赤貧ながらも(赤貧だからこそ逆に)かっこいいクリエイティビティあふれる職人職業」として作詞者、作曲者、音楽クリエイター商売は時代ごとの若年層の間で生き残るのではないかと考える。

未来の音楽にまつわる鑑賞方法やデバイスの如何を問わず、音楽というものが人々に寄り添い、その人の人生における時代ごと、年代や年齢ごとの思い出を構成するものであることには変わらず、音楽という文化は消滅することはないが、それに対する人々の嗜好はかなり細分化かつ多様化し、今よりもっと、音楽を制作するハードルが下がり、さもすれば一人一ジャンルの音楽を愛でる”超・細分化/多様化”の未来が待っているのかもしれない

日本結婚相談所連盟


今回も私の思うところを書き殴ってしまったが、当ブログが僅かでもあなたのお役に立てれば幸いだ。

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