メダルを噛むおじさんと信号を守らないおじさんは同種という話
アップデートできない人間は社会から疎んじられる運命にある
価値観や倫理観が生まれ育った時代のままで大人になると世間から異端認定されるだけでなく、私生活や仕事にも支障をきたすことは言うまでもありません。
今年、東京オリンピックが開催され日本選手の金メダル記録がオリンピック史上過去最高の獲得数を記録しましたが、金メダリストとなったソフトボール日本代表の後藤希友選手が名古屋市庁舎を表敬訪問した際の、河村たかし市長とのやりとりが以下のようなニュースになりました。
金メダルを噛んでいいのは苦心の末にメダルを取ったアスリート本人だけなのは言うに及ばずながら、この事件には3つの問題点があります。
① アスリートがどういう過程を経てメダルを獲得するに至ったかという理解や敬意が足りていないという点
② コロナ禍において感染症に過敏になっているご時世でやすやすと人の持ち物に手を触れる、噛むという行為に配慮が足らないという点
③ 市井に模範を示すべき自治体の首長がたとえサービス精神のつもりとはいえ嬉々としてこのような行為をしてしまうという点
河村市長はメダルを噛んだだけでなく、表敬訪問した後藤希友選手に対してのハラスメント発言があったとされていますので、それが事実だとすればもはや「なぜこの人が市長になれたの」レベルの辟易する思いで、開いた口が塞がりません。

信号を守らないおじさんと河村市長は同カテゴリーに属する種族
「子供の頃は許された」「若い頃は当たり前にやっていた」言動を大人になってもやってしまう、ということが一部の人間にあります。
信号を守らないおじさんもそうです。
信号自体は、たとえば深夜の誰もいない道路の赤信号をきちんと守って青になるまで待つのかという問題はあると思いますが、交通ルールを守るべきなのは当然として、大人が信号を守らないことは以下の問題があります。
・交通ルールを覚えるべき子供に悪影響を及ぼす
→小さな子供が交通事故に巻き込まれないように学校や自治体、警察などの社会全体で取り組んでいるのに、その子供の目の前で大人が赤信号を守らずスタスタと渡っていったとしたら子供に示すお手本がなくなるのと同時に、子供が「ルールを守らなくてもいいんだ」と捉え、当たり前に赤信号を渡るなどして事故に巻き込まれるリスクが上がってしまいます。
・勤務先の関係者、取引先に見られるというリスク
→赤信号を堂々と渡る場面を取引先にでも見られてしまったら、「あの人の会社は社会ルール、コンプライアンスすら守れないんだ」と判断されてしまい、取引に支障が出る可能性があります。自分だけでなく会社にまで迷惑をかけてしまう行為であり、大きなリスク要因を自らが生み出してしまっている状態です。
上記は大人であれば誰もが当たり前にわかっているはずのことなのですが、これを侵している大人は多いです。
「信号を守れ」という原理主義的な正義感や社会ルールの話をしているわけではなく、それ以前に価値観や倫理観が時代に追いついていない、アップデートできていないトランスフォーム失敗おじさんが蔓延る極めて深刻な事態が社会のあちこちで起きていて、こういう種族を周りがサポートをしてアップデートさせることでしか解決の糸口が見えません。

「今の若者は」は大人の語り草
おじさんが若者によく言う定番のセリフ「今の若い者は」については、
過去の記事
(「今どきの若者は」は古典落語みたいなものという話)
でも解説したように、実のところそれを言う大人自身が若い頃に当時の大人から散々言われた言葉であり、自分が年を取ってからその分を若者に還元しているにすぎないのです。
金メダルを噛むおじさん、信号を守らないおじさんは同種族であり、こういう大人が言いがちな「今も若い者は」という言葉は気にしなくていいどころか、若者に対していかなる言い草もかます権利がそういう大人にないのは言うまでもありません。
むしろ、若い人たちが世の中の大人に対して「今の大人は」と言わなければならない時代なのかもしれません。
私自身も、当ブログを訪問してくださったあなたもみんな平等に、順番に年を取ります。
せめてこの記事を読んでくださったあなたには、そういう大人にはならず素敵な大人になることを願ってやみません。
当記事を書いた私自身への自戒も込めたところで、今回はここで筆を置きます。


