【お詫び】6/26公開「テレビがなぜつまらないのか」、7/28公開「オリパラ特番でなぜテレビタレントを起用するのかマーケティング目線で分析する」の記事について

マインド マーケティング 生活 仕事

6/26公開の「テレビがなぜつまらないのか」の記事、
7/28公開の「オリパラ特番でなぜテレビタレントを起用するのかマーケティング目線で分析する」の記事、
上記に多くの反響をいただきました。
たくさんの方にお読みいただいたことで書き手冥利に尽きると感じた一方で、残念ながら少し間違った方向で伝わっているように見受けられたので、これに対する釈明記事を書く必要があると思い、筆を取りました。

日本結婚相談所連盟

「テレビ」=オワコンは誤り

前提として、テレビは残り続けます。

ただし、次世代も残るのはあくまでデバイスとしてのテレビであって、産業としてのテレビ局(業界)の展望は暗鬱としています。地方のローカル局も在京キー局も衰退の一途でしょう。

新聞の時代がありラジオの時代がありテレビの時代がありネットの時代があり・・・と時代ごとに必ず産業の栄枯盛衰があるという歴史的事実があり、一つの産業が未来永劫と力と存在感を放ち続けることは有り得ないというのが自然の摂理です。
今はネット全盛期で人々はネットがなければ生活できない、ネットのない生活なんてあり得ない状態にありますが、かつてのテレビだってそのようなポジションにある産業だったのです。その時はテレビが衰退して別のデバイスに取って代わられるなどなど誰も想像だにしていませんでした。

そういう潮流を簡単に言語化するならば「時代の変化」でしかないのですが、テレビ番組の製作費は年々落ちている、つまりテレビの広告収入が激減しているという局面にテレビ業界は喘いでいて、企業としての放送局の体力は老人のように落ちています。
そうなると、先述の2記事でも触れたように、未来のテレビというものは防災インフラのデバイスとして残っていくだろうというごく自然な結論に至ります。

テレビが生き残る道

芸能界依存を断ち、ネットとの融合を図ることでサバイバルしていくのがテレビ業界に残された道。
これしかありません。

「芸能人ワーキャーお笑いドッキリ罰ゲーム歌って踊って博覧会!」みたいな金太郎飴的「バラエティー番組」「ワイドショー」「大手芸能事務所タレントの提灯PV」のような画一的コンテンツの粗製濫造はやめて、ネットとの融合を図りつつメインコンテンツで自分たちの一丁目一番地である地上波テレビ番組の質を向上させ、少しずつ視聴者を取り戻して延命するのが、テレビ業界として唯一の生きる道でしょう。

もはやテレビを見ているのは時間的余裕のある高齢者、オタクのおじさん、比較的生活の余裕のある主婦・主夫くらいになってしまいました。
しかもオンタイムで真剣に見ているというより、なんとなく惰性でデバイスとしてのテレビをつけているくらいでそれはテレビというよりもラジオに似た、生活のBGMとして家庭で流されている程度にまで貶められています。

そのような、一般社会で言えば倒産寸前の深刻な赤字企業の状況にあって鷹揚に構えている場合ではなく、凝り固まった概念や意識を時代に合ったバージョンにアップデートし、自分たちの生き残る道を真剣に模索する時がとっくにきているのです。
今から改革の行動を起こすのではあまりに遅きに失しているものの、やらないよりはましです。

コロナ禍という人類にとって戦争に次ぐほどの史上最大級の不幸な事件がありましたが、ピンチをチャンスとばかりに、それを強引ながらも理由にして、業界の悪しき商習慣を今こそガラガラポンする、今まさに絶好のチャンスが訪れています。

テレビの復権はあるのか

時代は変わってしまったので「お茶の間の王者」には返り咲けないでしょうが「マス」メディアとしての矜持にかけて、再び大衆に振り向いてもらえるように再起を図るのが最適解。

”ギョーカイ”人に浸り、業界以外の人を”素人(シロウト)”と呼ぶ慣習に代表されるその選民思想に心身を窶すことなく、自分たちが胡座をかかないで崖っぷちのチャレンジャーであるという危機感を持つしかありません。

ネット全盛期にあるテレビは”オールドメディア”と形容されがちです。
その”オールドメディア”を作り上げるテレビマンとて会社員です。会社員であれば、会社の利益、業績を上げるにはどうすればいいのかということを考えるのは大前提に、テレビマンとしてはスポンサーや芸能事務所、広告代理店に囲われているという中で「できること」「やらなければならないこと」を前提としたものづくりをする必要があるわけですが、それは世の会社員全てが当然持つべきマインドで、テレビマンだけが特別というわけではありません。
会社員やフリーランス、公務員とか、テレビマン、メーカーのエンジニア、食品の営業マンとか業態産業職業に関係なく、会社員という生き物はそれぞれ与えられた環境の中で「できること」「やらなければいけないこと」をこなしつつ、いつか「やりたいこと」ができる日まで研鑽を積んでいるわけです。

それでも残念ながらテレビ業界は特殊な業界のため、周辺の業界と護送船団みたいなムラ社会を形成し内輪の馴れ合いに収斂する傾向が強く、たとえ志の高いテレビマンがいたとしても、いずれ理想と現実の間にもがき「やりたいこと」をできる機会は僅少でしょう。

ネット時代やデフレ社会その他が生み出した不況というタイミングなど彼らの置かれた苦境は察するに余りあります。
これはテレビ業界限定の話ではなく、働く人、社会人全てが持つ深刻な悩みでもあり、以前書いたテレビ業界に関する2記事についてはそういう意図を含んで書いています。

そして繰り返しになりますが、単純にテレビ業界への批判記事と受け取られた方がいるのであれば筆者としては極めて残念でなりません。
ぜひ以下をお読みになって記事の本質をぜひご査収いただければ幸いです。

・6/26公開「テレビがなぜつまらないのか
・7/28公開「オリパラ特番でなぜテレビタレントを起用するのかマーケティング目線で分析する

「芸能界の御用聞き」からの脱却で新時代の光明を

BSやCSでは一部でいいコンテンツを放送しているわけだからやればできるんです。

NHK、TBS、テレビ朝日、日テレ、フジテレビ、テレビ東京の在京各局はBSとCSのチャンネルをそれぞれ持っていますが、地上波があまりに醜態を晒すためBSやCSとスカパー経由で有料チャンネルを試聴していると、BSやCSでは時々いいものづくりをしているではないですか。

やればできるんです。

テレビマンとしての初心にかえり、本来持っていた使命感やイマジネーション、クリエイティブをいかんなく発揮して、大衆をして「そうそう!こういうものが見たかったんだよ!」と狂喜して言わしめるようなものづくりをやり続ければ山積する問題が解決する端緒になると思います。

テレビマンの皆さんにはぜひ、テレビマンを志した当時の気持ちを思い出してほしいものです。

動物、グルメ、テレビタレントコメンテーターと街角ネタごちゃごちゃの政治報道ワイドショー、ドッキリ罰ゲームワイプでVTRリアクションスタジオお笑い芸人アイドルギャハハ大手芸能事務所のご機嫌伺い集金バラエティー番組が悪いとは言いませんが、本当にやりたかったこと、作りたかった番組はそれですか?


テレビは芸能界やスポンサー企業、広告代理店のものではありません。視聴者、国民のものです。あくまでテレビは公共の電波、文化財を利用したコンテンツ産業です。

それなのに、長らく視聴者からは「テレビには同じような人ばかり出て同じようなことをしている」「ジャニーズばかり」「吉本ばかり」「ホリプロばかり」「バーニングばかり」「ナベプロばかり」などと言われそっぽを向かれています。若い層を取りたいと思っているのに若者はスマホのアプリにしか興味を示していません。若者よりは比較的テレビを見そうな現役世代もネット配信コンテンツが生活のほとんどを占める有様です。
特定の芸能事務所、大手事務所に偏ったキャスティングが悪いんだという意見がネット上にも散見されますが、それは問題の本質ではありません

社会のテレビに対するイメージとしては「テレビなんて自分には関係ない。特殊な業界の人たちが特殊な人たちに支持されて内輪で何かをやってて、特殊な業界の人たち同士で自己満足に浸るための装置」くらいの認識であることは、近年のテレビ業界の不審という数字に顕著に反映されているところです。


かつて庶民の憧憬を集めたテレビ業界は、そこまで落ちてしまいました。
そんな境遇にいつまでも甘んじるとはテレビマンとして悔しくないんですか?

とっくに安易な画一的フォーマットに逃げてきた結果が今の危機的状況なのですから、これをテレビ業界との今生の別れになるかもしれないくらいの覚悟を持ってネット時代のテレビという新時代の開拓者になってフロンティアを突き進んで新しい文明を築いてほしいと、テレビ黄金期を知る元テレビ好き、テレビの一視聴者として切に願うばかりです。

私自身はテレビの黄金期に多感な少年期を過ごし、長らくテレビっ子でありました。
「落日のテレビ業界」などと揶揄されがちな業界ですがまだまだ社会への一定の影響力は保っていますし、テレビマンには初心を思い出してもらって奮起を促したいと思いつつ、先日公開の2記事には以上のような意図が含まれるので、単にテレビ(局、業界)を貶した訳でないことを理解していただきたいことをお願いして、筆を置きます。


👉 筆者がテレビ業界、芸能事務所で働いた時の思い出を書いた過去記事は以下の一覧から適宜ご参照ください。
私が経験したエキセントリックな会社5選【芸能・テレビ・広告・制作】
芸能事務所で働いた時のヤバイ体験
芸能界は今でもヤクザ稼業という話