フリー歴10年の私がフリーランスで注意すべきことを語る
✓ もくじ


フリーランスの立場は外様大名
フリーランスは企業に雇用されていません。
フリーランスとして働く契約モデルとしてはフリーランス専門のエージェントを通すか企業と直接契約をするかのいずれかが一般的です。
働き方や仕事の受注形態としては、
【業務委託契約】
【準委任契約】
のいずれかを選ぶことになります。
私はIT系フリーランス歴10年くらいですが、いずれも経験あります。
ざっくり言うと「業務委託契約」は成果型報酬、「準委任契約」は労働(常駐)時間契約による支払い報酬設定の違いです。後者は俗にクライアントワークとも言わるタイプのものです。
✏️ フリーランスが取るべき契約形態についての詳細は以下の過去記事をご参照下さい。
▶︎ 【完全ガイド】フリーランスになるにはどうすればいいの?
フリーランス契約をしてその企業の案件にコミットしたら、対外的には契約した企業(クライアント)の社員として振る舞うことになります。
クライアントの受注先企業とはクライアントの社員として交渉や折衝に当たることになります。相手からすればあなたはそのクライアントの社員と思っていますし、そう振る舞う必要があります。
とはいえ、クライアント社内においてはプロパー社員ではない外部・外注の人間であり、クライアントの組織には属しているものの雇用関係にはないので、契約したフリーランスがクライアントに席を与えられて常駐しているという形態でクライアント社内の仕事をこなします。
私の経験上ですが、ほとんどの企業ではフリーランスを自社員並みに扱ってくれますし権限もそれなりに与えてくれます。もしくはプロとして社員以上の期待をかけてくれたりもします。
雇用関係にないのでクライアントの社員規則に縛られることもないし、評価面談もなければ社内勉強会などのイベントへの参加義務もない、社内にいながら少し外からの目線、俯瞰で日々働くような立場です。
要するに社員のようで社員でない、個人事業主として席を与えられているため、一国一城の主が自分の城でないところへ派遣されている状態で、肉体的精神的に独立したいわば外様大名のような心持ちで案件の遂行に当たるのがフリーランスと言えます。外様大名、あるいはフランス群で言えば外人部隊の傭兵、プロ野球チームで言えば助っ人外国人選手と表現してもいいでしょう。

外部スタッフ慣れしていない会社には要注意
「準委任契約」(クライアントワーク)を結んでクライアント先に常駐する場合は先項で述べたようにクライアントの社員として対外的に振る舞い、クライアント社員と同等の職務を全うすることになります。
クライアントの組織に組み込まれ、プロパー社員と同等の動きをするので(クライアントからもそれを期待されている)この契約形態で働いていると見落としがちな視点が、クライアントが「外部慣れ」をしているか否かというとこにあります。この有無で、フリーランスとしての働きやすさに明確な差が出てしまいます。
自社内がプロパー社員がほとんどという企業の場合、フリーランスや派遣社員などの外部スタッフ慣れしていないことで作業報告書や請求の内容などがあとあと契約面で拗れるリスクも孕みます。
私の経験上、IT系であればベンチャー企業などはこれに該当することが多く、その場合は契約内容(報酬金額、稼働幅、業務内容、業務権限、勤務時間、作業報告書提出の義務と締め切り日時など)を明確かつ詳細に文面化してから合意することをおすすめします。
口約束は絶対にNGです。
あらゆる契約ごとは書面にて取り交わしましょう。


プロパー社員との関係構築のコツ
フリーランスが継続して案件を受注するにはクライアントの信任を得る必要があります。
クライアントの信任を得るには、日頃よりの現場における人間関係をどのように構築しているかが響いてきます。
クライアント組織の中に組み込まれているにもかかわらずクライアントと雇用関係にないという立場上、プロパー社員との距離感や人間関係の構築についてはフリーランスにとってはひと工夫が必要と感じることが多いです。
プロパー社員と同じプロジェクトを回していても、アクセスできる情報に制限があることがフリーランスには多く、日々のタスクにまつわる認識の齟齬などが発生していないかをつぶさに確認する必要があります。
プロパー社員のように振る舞いながらもマインドとしては彼らの組織に籠絡されないように一定の距離感を保つという複雑な人間関係の構築が必要だと私の経験上では痛感します。
ざっくり言うと「社員のようで社員でない、組織の一員のようで一員でない、あくまで外部の人間としてクライアントに協力する」というスタンスがフリーランスとしては適切な気がします。

契約更新してもらえる鉄則5か条
「業務委託」「準委任」いずれも受託案件であり数ヶ月規模になることが多く、契約もそれに合わせて締結されます。
IT系で言えば主にWEBサイトの制作やシステム開発などが最も多い案件で、制作(分析、提案、企画、制作の工期、運営、メンテナンスなど)の発注としては数ヶ月単位で依頼され、都度プロジェクトの状況に応じて契約を更新されることが多いです。
つまりは「業務委託」「準委任」も同じようなサイクルで契約が更新されることになるわけです。
クライアントの希望通りのパフォーマンスを発揮していれば中長期的な案件であれば概ね(というか他の魅力的な高条件プロジェクトをやりたくでも 契約中のクライアントに捕らえられて 離してくれないことも多いので)自動的に契約更新というケースが多いですが、クライアントの意向で契約打ち切りという場合もあります。
クライアントの意向というものにはさまざまな事情がありますが、業績の悪化や予算の都合の変化でプロパー社員だけでプロジェクトを回したい、あるいはプロジェクトが自社オンリーでのメンテナンスフェーズに入ったなどの理由が多いです。
私のようにIT系のフリーランスはポジション職種かかわらず総じて一般的な正社員より遥かに高収入のため一定期間お仕事をしたら数ヶ月は遊んで暮らせるくらいの蓄えがあると思いますので生活苦にはならないでしょう。
それでもフリーランスは個人事業主・自営業であり、とりわけ会社化して個人事務所としている人であれば入るはずだった大規模案件の報酬が入らないということになれば売り上げの大幅減になるため痛手です。
それではそうならないためにクライアントから契約を更新してもらいやすくしたい場合はどのようなことを心がければいいのでしょうか。
私の経験上では以下の5つが鉄則かと思います。
フリーランスがクライアントにプロジェクトの更新をしてもらうための5つの鉄則
① クライアント関係者との早くて綿密なコミュニケーションを心がける
② 不可能な要求であれば拒否や反発ではなく代替案や折衷案の提案を行うことをデフォルトとする
③ クライアント関係者を全員「さん」付けで呼ぶ
④ 日々の成果物や日報、作業報告書、請求書などのドキュメント類の提出は締切を守る
⑤ 日々のシーンにおいてプロパー社員でない外部目線での提案をする
どれも些細なことですが、たったこれだけでクライアントの心象が変わります。

契約締結時の注意点
フリーランスとしての契約の理想形はできるだけ高い報酬のプロジェクトにできるだけ長く関わらさせてもらうということに尽きると思います。
案件を単一、複数持つにしてもできるだけ期間が長い方がそれだけ多く報酬をもらえるから長く食いつなげるわけです。
もちろん、期間の長い案件はそれだけ心身が消耗します。条件に見合わない案件を受けてしまったら早めに損切りする必要があるかもしれませんし、ある程度プロジェクトを軌道に乗せたらクライアント(プロパー社員)の手に戻すこともあるかもしれません。私はこれを釣りの作法になぞらえて「キャッチアンドリリース」と呼んでいます。
いずれのケースにせよ、契約締結、更新時には契約内容を詳細まで確認の上で、何らかの不備があれば要件を詰め、自信が納得した上で契約を結ぶ必要があります。
その前提で、契約を締結、更新する際の注意点をピックアップします。
【業務委託の場合】
・求められる成果物の精度、仕様などを明確にする
【準委任の場合】
・精算幅を明確にする
→月稼働が何時間〜何時間までが報酬満額支払いの条件で、夏季休暇や年末年始、ゴールデンウィークその他で休暇をもらう場合で精算幅内の下限時間を下回る場合、あるいは残業過多で上限を上回る場合の支払い、控除の金額計算を明確にする)
【業務委託・準委任共通】
・関わるプロジェクト(予定されるポジション)の制作期間はいつまでか(数ヶ月程度の短期なのか何年レベルの中長期的なものか)を明確にする
・報酬の支払いサイトについて確認をする
→月末締めの翌月末払いが一般的ですが、中には60日後などの条件を提示してくる企業やエージェントがあるので要注意です。締めから支払いまでの期間が長い案件は、クライアントの業績不振や倒産などがあると支払われない可能性があるなどリスクが高いです。
・深夜、休日対応を含むかどうか、またそれらの場合の報酬計算を明文化する
・契約更新の場合、クライアントから契約終了何日前までに連絡が入るのかを明文化する
・契約更新の場合、報酬金額など条件面に変更はあるか確認する
(テレワーク契約の場合)
・オフィスへの出社の義務は発生し得るか、また、コロナ終息後その可能性はあるか、あるとすれば月あるいは週に何日程度を考えているか
こういう交渉をできるかどうかで自分自身の収益を左右するのみならず、フリーランスとして優秀かどうかの分かれ目だと私は考えます。
フリーランスの条件設定やクライアントとの交渉に必要な情報は以下に書いていますのでぜひご参照下さい。
✏️ フリーランスについての詳細は以下の過去記事をご参照下さい。
▶︎ 【完全ガイド】フリーランスになるにはどうすればいいの?

番外編:フリーランスにとって良い会社悪い会社
フリーランスのような外注にとって働きやすい、仕事をしやすいクライアントとそうでないクライアントがあります。
これはその会社の風土がそうしているのでそこで働くプロパー社員それぞれには罪はないものの、フリーランスとして企業とお取引きする場合は、そういうクライアントは避けた方がいいです。
フリーランス歴10年超になろうとする私の経験則ではありますが、フリーランスにとって良い会社と悪い会社を以下のようにリストアップしました。「業務委託」「準委任」共通のチェックリストです。
【良い会社】
・外注と社内リソースの線引きの明確化がなされている
→外部リソースへの理解と社内リソースの管理、それらの線引きがしっかりとしている会社はフリーランスにとっても仕事がしやすいです。
ただし、このいわゆる「外部リソース慣れ」している企業はクセモノで、自社社員含めた人材が流動的すぎて固定しない悩みを抱えている可能性を孕み、フリーランス契約をする立場としてはリスクも潜む表裏一体の特徴でもあります。
この特徴が見られる企業では、通年でたくさん退職者を出していないかを見極めることをおすすめします。
人がたくさんやめていく会社では往々にして「ブラック労働」になりがちで(ブラックだから人がやめる、残された人にしわ寄せが来てさらにブラックに…の悪循環から抜け出せない=経営陣が無能)、契約書上でグレー部分の仕事、タスクとしても無茶振りをされる可能性もあり、支払いに関してもいずれ渋る、業績不振に悩まされているケースも多いので会社の整理縮小統合や倒産の可能性まであると判断せざるを得ず、支払いサイトによってはリスクが高まります。
・会社への貢献度を認めくれる
→契約更新時にクライアントが貢献度を認めてくれて報酬額アップの材料にすることができ、報酬単価がアップすることもあります。
外部リソースへの評価基軸がしっかりしているところは自社社員への扱いもよくホワイト企業であることが多いので、フリーランスであっても安心してお取り引きできます。
・フリーランス特有の諸事情への理解がある
→正社員であっても働き方の多様性を認める企業も出てきていますし、アフターコロナにおいてはテレワークを導入する企業も増えていますので、彼ら正社員とて家庭の事情などを考慮される文化になりつつあります。
コロナ禍の以前から多様な事情があってフリーランスを選んだ人が多い背景があるため、それらに理解のあるクライアントだとフリーランスとしても働きやすいです。
「準委任」で常駐時間が定められていたとしても家の都合で少しだけ抜け出すことくらいなら許可してくれるなどの理解のあるクライアントは間違いなく良い会社です。
・自社社員の扱いがいい
→自社の社員に対しての扱いがいい企業はフリーランスなどの外部リソースへの扱いもきちんとしていますので仕事がしやすい良い会社です。
社員じゃないけど「就業規則」には縛られる場合がありますが、社員外部含め働く人に対して柔軟性があるフレキシブルな社風のクライアントだと、そのあたりは現場のプロパー社員との交渉次第で割とどうにでもなります。

【悪い会社】
・外部リソースへの対応が雑
→「契約更新の有無については契約終了の○日前までに通達すること」という契約条件を守らない、契約まわりの対応に雑なクライアントが稀にあります。
これは担当者が多忙すぎて忘れがちになる場合がほとんどですが、契約終了であれば次の案件に移る必要があるためここをきちんとしない企業はフリーランスとしては良い会社とは言えません。
・働く人全てへの働き方の多様性に対して非寛容的
→自社社員やフリーランスなど外部リソースに対しての働き方、仕事の進め方に対してガチガチにコントロールしようとする企業はフリーランスとして見た場合良い会社とは言えません。
そもそも社員にブラック労働をさせている企業、社内でハラスメントが横行しているようなひどい扱いを社員にする企業などは、フリーランスにとっても良い会社なわけがありませんからお取り引きすることにはリスクが伴います。
・情報管理が緩い
→エントリー時の職務経歴書やポートフォリオが自社社員が誰でも見られる状態になっていたり(情報アクセス権限レベルの不設定)、面接を担当する役職者のGoogleカレンダーに応募者(正社員新卒、中途採用、派遣、フリーランス問わず)の姓名や給与・報酬・時給の額まで書かれているという信じられない会社に当たったことが過去にあります。そういう組織は機密情報や個人情報への扱いに対しても緩いことは想像に容易いです。
当然ながらそういう企業は情報管理にズボラな傾向にあり、フリーランスとしてお取り引きすることにはデメリットが多いことは言うまでもありません。
情報を大切に扱えない企業は人に対しても同じで働く人を大切に扱えない企業であると言い切れます。
・フリーランスを部下のように扱う人がいる
→あくまでこちらは外部の人間で、組織に組み込まれているようで組み込まれていない、対外的には社員として、あなたの部下として振る舞うが、契約上はそうではない。それにもかかわらず、少なくない企業の然るべき立場にある社員(役職者)で、自社の社員と同等に扱い、フリーランスに対して上長のように振る舞い、部下のように扱おうとする人がいます。
要するに「あんたの部下じゃねえ」という話なのですが、意外にこれをわかっていない人がいるのです。
フリーランスを「自社の社員と同等に扱う」ことは表面上ではいいことに見えますが、こちらはそちらとは違う契約で動いているので、自社社員と一緒に扱われることはリスクにしかなり得ないので注意が必要です。
✏️ 正社員向けに書いた過去記事ですが、ブラック企業チェックリストを作っていますので興味あれば以下からご参照下さい。会社がブラックかどうかは正社員、契約社員、派遣社員、アルバイト、フリーランス関係なく当てはまりますので参考になると思います。
▶︎ 【あなたの会社は大丈夫?】ブラック企業診断 最新チェックリストとブラック企業から抜け出す方法
✏️ フリーランスとて正社員の就職転職と同様に会社レビューサイトでヤバイ会社かどうかを見極める必要があると思います。ヤバイ会社を見極めるガイドを記した過去記事がありますのでそちらもあわせてご参照下さい。
▶︎ 会社レビューサイトでヤバイ会社を見分ける方法
あなたがこれからフリーランスになろうとしているのであれば、あなたのフリーランスライフがよりよいものになりますように。
あなたがフリーランス現職であればよりよいフリーランス活動ができますように。

