「組織に残るのは無能な人だけ」についての論考
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組織人として有能=個人としての有能ではない
先日、こんなニュースを見かけました。
コロナ禍においてテレワークが普及したことにより組織としての会社に依存するマインドが会社員の中で低下しており、組織の中でのし上がっていくことへの関心が薄れているということはコロナのパンデミック当初から言われていたことですが、その現象が世界中で如実にあらわれたことを明確に示す記事です。
人が組織に属することへの興味をなくしているということは、組織の中における出世に興味がないと言い換えることができると思います。
例えば建設業の大卒入社の新卒社員は入社3年以内に3割が離職(退社)するという政府のデータがあります。
※[出典] 厚生労働省「新規大卒就職者の産業分類別(大分類※1)就職後3年以内※2の離職率の推移」(令和元年)
あくまで産業別なのでもう少し低い業界もあるものの、少なくとも1〜2割の新卒社員が3年以内に辞める世の中ということです。
社会的サラリーマン的使命感に燃えるフレッシュな若手社員とてその程度なのだという前提に立つと、同じ会社に5年も10年もいる人は、さもすれば定年退職や企業年金、退職金という概念も過去の遺物と化した現代においては、いくら生まれ育った時代の違いとはいえ、現代においては稀有な存在と言えます。私からするとそんな人は宇宙人にしか見えません。
約10年前に正社員という肩書きに興味を失い独立してフリーランサーになった私としては、社員として働くこと自体がだるくて嫌なのに、それを5年も10年もやるなんて修験者ですか?と問いたいです。
もちろん、会社員(正社員)という立場は労基法に守られており各種社会保障完備でクビにもなりにくく厚遇された身分です。
30代前半くらいまでは恵まれた立場にいながら会社員にしかできない経験をし、経歴を太くし、人脈も構築しておき、安定収入のあるうちに将来を見越して副業などなんらかのマネタイズを複数ルートで構築しておくことが食いっぱぐれない人生への昇華に繋がることは「副業の解禁」を大企業ですら奨励する時代から確実に読み取れます。

組織の中でのし上がっていく人は間違いなく有能
もともと起業マインドの高い人が集まる組織として有名なリクルートのような企業でなくとも、終身雇用制度という概念が崩壊して久しい現代社会においては会社に言われようと言われまいと、あるいは「副業禁止」を規定した企業に勤める会社員であったとしても、独立心までを涵養されるかどうかはともかく、みんな何かしらの副業に手を出し、副収入を得ようと必死であがいている人がごろごろといる時代です。副業禁止の総本山であるはずの公務員ですら隠れて副業をやってバレるという事件すら起きています。
そういう時代にありながら副業などのマネタイズや収入ルートを増やしておくといったことに関心がなく、あくまで会社にしがみ付く人は「安定」を捨てるのが怖い人なのだろうし人にはそれぞれ事情や思想、人生設計があるから他人にとやかく言われる筋合いではないし当人が好きにすればいいのです。人間は本能的に変化を恐れる生き物です。
彼らを「組織に残る無能」と唾棄することはかなり短絡的で、先述のように組織人=無能、フリーランス=有能というイメージはここ数年、社会の固定観念と化したものであり、組織に残ってチームを率いて、あるいは自らが能動的に捨て石となり大きなプロジェクトを回して社会を変える有能な人だっています。
組織の中に残り、のし上がっていくというのは能力のある人であることは間違いありません。
しかしながら、それはあくまで組織の中での能力であることが大半で、別の組織に移れば前歴の経験が役に立たないといったことは往々にしてあります。有名企業のピラミッドの中でのし上がった経歴や肩書きがのちの転職や起業に役立つ場合も往々にしてあり、そこで蓄えたスキルがどこかで役に立つことはあるでしょうが、守られたの中での経歴が、いざ個人となればどこまで役立つのかは不透明です。
私はいろんな企業にフリーランスとして入らせてもらってきていますが、同僚のプロパー(その会社の正社員)に「なぜ社員なのか」と問うと、最も多い回答が「安定しているから」「安定を捨てるのが怖い」といったものです。
正社員としてずっとやってきた人が会社を辞めて、転職で別の企業に移るなり独立してフリーランスになるなり、井の中の蛙だった人が外の大海に出ることは腹を切るほど勇気のいることだと思います。
斯く言う私とて、会社員をやめてフリーランスになった口ですから、そういう人たちの気持ちは痛いほどわかります。とりわけ家族のいる人であればなおさらでしょう。
安定している会社員とて組織というサバイバルの中にもがいているわけです。
そこでのし上がっていく才能があることは組織人として大変に有能と言えますが、ただ単に「安定」を求めるだけで、会社を安住の地くらいに考えている人は、果たして「有能」と言えるのでしょうか。私からすれば危機感と向上心がなさすぎです。会社員の中には実はこの手のマインドの人はかなり多いです。
大企業とて早期退職を促すわけですし、倒産や整理解雇の憂き目に遭うことだって有り得る。ある組織に「のみ」依存することがいかに人生においてリスクかということに気がついていないのです。
以前書いた正社員でいる人に向けた疑問についての記事は以下からご参照ください。
✏️ っていうかなんで正社員なの?

どんな大組織でも結局は個人の集合体でしかない
社会の大きな物事を動かすのは大企業など大きな組織がやるもので、その組織に埋没せず組織の中に身を置き組織人として世の中を動かす人は間違いなく優秀です。
組織というものは個人の集合体でしかなく、能力のない人ばかりを集めた組織には社会を変革させるポテンシャルもないわけです。
逆に言えば、有能な人たちが集まる組織に身を置く人は有能な人が多く、結局は組織人としてどの組織にいるのかが重要ということになるものの、それでもせいぜい30代前半くらいまでの人に当てはまる話でしかありません。
いまどき役員でもないのに40歳を超えて会社に残り続ける人は周囲からヤバい人認定を受けてしまいます。良い悪いではなくそういう時代なのです。
最近の風潮として大手企業で正社員でいられるのは頑張っても40歳くらいまでが関の山です。
早期退職制度や社内起業制度などがあるもののそれは暗に「面倒見きれないからな」のサインでしかなく、ある程度の年齢までは面倒を見てやるが、あとは好きに生きていってくれと会社が内外に公言しているのです。
20代30代くらいの若い人が経験の場を積ませてもらえることと、それを安価で雇用しつつ収益を上げるのことをトレードオフとして考えるのが現代社会のビジネスモデルです。
組織の中で出世を保証されたエリート街道をひた走るエリート中のエリート社員や、今は安定した会社員として暮らしながら将来の野望を叶えるために沸々と燃え盛る準備をしているということなら話は別ですが、そうでなければ会社員として生きながらもいつかは個人で勝負をしなければならない時代が来るということを念頭に置き、会社員としての安定したい地位にあぐらをかかず、いつ大海に放り出されてもいいように備えておかなければいつか泣きを見るということを誰が言うわけでもなく時代が教えてくれています。


組織に埋没する個人にならないために
集団の時代から個人の時代へ。
コロナ以前から「働き方改革」「働き方の多様性」などが叫ばれていて、私も「そんな風に緩やかに変わっていくのだろうな」くらいに構えていたら、コロナ禍においてそれが急激に進み、私のようなIT系フリーランスなどはテレワークがメインとなり、余計に組織への寄与が薄れている現状があります。同業種の人も同じ思いを抱いていることでしょう。
時代のトランスフォームに順応できない会社員は組織に埋没し、時代に取り残されます。
コロナ禍が明けて世の中が元通りに戻るのか、はたまた新しいアフターコロナの時代がやってくるのかはわかりませんが、人々が一度手にした「働き方の多様性」を手放すとは到底思えず「リモート勤務」が前提の働き方が主流になり、オフィスへ出社するしない問わず、これまでもいた時短社員や週3日〜4日勤務のような人がもっと増えるでしょうし、その逆に組織に依存をする人や会社に残って出世したいと考える人は減るでしょう。
私からすれば会社員(正社員)として組織に属するという働き方はまだまだ人生にトランスフォームしづらいように見えます。
就職転職を考えている方で大企業を受けるかベンチャー企業を受けるかで悩んでいる人がいたら、過去に書いた以下の記事をご参考になさってみてください。
✏️ 【徹底比較】経験談から分析 大手orベンチャーどちらがいい?
組織人として生きるがゆえに個人としての輝きを失わないように、今勤める会社の仕事以外のスキルを身に付けておき、できれば副収入のルートを確保しておき、個人的には起業するかフリーランスになってほしいと願います。
そうでなくても、今の会社は数年で蹴りをつけて転職するなりそれ以外の自分の野望に忠実に生きていってほしいと願ってやみません。
当記事があなたのお役に立てれば幸いです。

