「今のフリーランス煽りの風潮はかつてのフリーター煽りと同じである」論考
結論=それは若い人限定の話でしかない。
優秀な人は大学在学中に起業して卒業後はそのまま自身の会社経営に専念するというケースもありますが、新卒で大企業に就職して正社員として数年〜10年程度働くのがベストです。
社会保障が充実していて労基法に守られ、解雇も容易ではない、頑張ればボーナスだってある。そういう恵まれた環境に身を置きつつ大きなプロジェクトで高額の予算を動かすなんて経験は大企業でしか積めません。バリューの大きい経験を積んでおくと経歴にも箔がつき、のちの転職にも有利です。
大企業以外、クリエイティブ職以外であっても、予算何億円レベルの巨大プロジェクトに携わることはできないかもしれませんが、それでも正社員であればその身分は安定しています。
若い人が、そういう手に入る身分をあえて手に入れず、あるいは手に入れたのに捨ててまでフリーターやフリーランスになる必要がない(あえてやる意味がない)のは言うまでもありません。

フリーランスとフリーターはまるで別物で比較対象にすらならない。
まず80年代と現在とでは当然ながら時代背景が違います。
80年代後半のバブル期は世の中が空前の好況で株価も景況感も右肩上がりであり、社会の第一線にいる現役層が戦後生まれ、親世代が戦中世代という環境であることが前提にあります。
2020年代現在とは背景が全く違い、比較できようもない別レイヤーの話であり、かつ正社員になることが容易で終身雇用制度が前提だった時代にあっていわば「はぐれ者」「誰にも支配されない自由を謳歌する若者」の代名詞として持て囃され、当の本人たちが嬉々としてその生き様を選択したフリーター(アルバイター)と、正社員の数は減り、しかもその正社員ですら40歳を超えると給与は下がるターンに突入、役職も取り上げられる、暗に「早期退職をする=定年まで面倒見きれないよ」と宣告される時代のフリーランスでは、比較のしようがありません。
フリーターはただのアルバイトなので企業から雇用されている労働者で税金や社会保障は天引き、フリーランスは企業と雇用関係になく、税金も確定申告にて自分で納税する。それくらいに違う生き物です。
しかも、2020年以降はコロナ禍という不世出で世界規模の災害の現出により、これまでのように生ぬるい生き方から急激なトランスフォームをする必要に迫られているのです。アフターコロナ、ウィズコロナの時代にあっては、これまでよりさらに革新的でフレキシブルに生きない人間は社会の片隅に取り残されてしまいかねないところまできています。そんな人類史で最も社会文化の変革スピードが速い時代は過去のいかなる時代とも比較対象になり得ないのは自明の理です。

好景気が続いていたら正社員のままでも良かった。
私自身がIT系のフリーランサーとして生計を立てている、かつIT系フリーランスのアフィリエイトブログを書いているからといって、正社員(というライフスタイル、雇用形態、それを軸に考える社会経済)を否定するつもりは毛頭ありません。
社会保険が充実していて税金も給与から自動的に天引き、労基法に守れていて、解雇も容易ではない。有給の取得が定められていて、頑張れば年に二回、ボーナスだって出る。安定している身分はフリーランスからすれば羨ましい限りです。
私が世に出た頃は、主に無能な政治家と官僚のおかげで、のちに「就職氷河期」「ロスジェネレーション(失われた世代)」「失われた20年」などと言われ日本の社会経済に多大な禍根を残す時代で不景気のどん底でしたが、幸いにして私は正社員にはなれました。(要するに我々世代は「政府被害者の会」主要会員とも言える)
その後、好景気が訪れていて労働市場が変わらず、終身雇用制が前提の社会のままだったら、私とて今も正社員として過ごしていた可能性はあります。
私だけでなく、ネット空間、例えばYahoo!知恵袋などには時代への怨嗟を感じさせるこの手の阿鼻叫喚エピソードは無数に投稿されているのをみなさんもご存知でしょう。
✏️ 以前書いたフリーランス、働き方関連の記事は以下をご参照ください。
▶︎ 【完全ガイド】フリーランスになるにはどうすればいいの?
▶︎ 【職種別比較】フリーランスの平均収入と実態まとめ
▶︎ 【それ、ぶっちゃけヤバイです】いつまで同じ会社で消耗してるの?

激しく変化する時代に適応した形が私にとってのフリーランスだった。
定年制という概念もない、つまり、ずっと同じ会社に勤めるという前提条件が崩れる、新卒で企業に就職したとして、遅くとも30歳くらいまでには一度目の転職か独立すべきという風潮が出てきたのは、変化する時代に働く人が適応した結果と言えます。
私自身もそうでした。
このご時世に同じ会社に長く勤めるということのステータスが低下しているばかりか私からすればその行為が不思議でなりません。
30歳以上にもなってずっと同じ会社に勤めた先に何があるのか?
40歳以上になると正社員としての転職は絶望的です。

今や大企業ですら早期退職制度や社内独立制度を取り入れています。
つまりそういうことです。
「ずっと面倒を見ていられないからな」が会社のアンサーなのです。
若いうちはフリーランスより正社員がいいし、できれば大きなプロジェクトを回した経験を積みつつ、副業OKの会社ならば副業ができるスキルを蓄えておき、貯金(資金)をできるだけ増やし、ある程度の年齢になったらその副業のどれかで独立、あるいはフリーランスとして働く人生設計が現代の生き方の最適解と言えるでしょう。むしろそれしか道がないと私は断言します。
もちろん職業や暮らす街によって差異はあるでしょうが、会社員という生き方に限界があるのはここ数年の社会情勢から見ても歴然です。

それぞれの時代背景を鑑みずに二つの時代を混同して語るなかれ。
異なる時代の労働市場は、バックエンドの違うシステムのようなものと考えるべきです。
どちらが良い悪いの話でもなく、似ている気もするが、実は全く異なるものでしかありません。
結論として、フリーランス(個人事業主)とフリーターはそもそもが異なるので、その煽り方があるとしても、違うものの煽り方を比較しようとしてもできないし、その行為自体が不毛でしかないのです。
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